4年間、黒羽刑務所にいた人のブログ

        私が刑務所で服役した4年間を振り返ります

7. 刑務所と拘置所の違い

 私は、東京拘置所から栃木県の黒羽刑務所へ移送されました。
さて、黒羽刑務所は過ごしやすいのでしょうか?


 黒羽刑務所は栃木県北部の大田原市に位置します。私がこちらに移送されたのは11月だったのですが、すでにものすごく寒い・・・。刑務所の住所が「栃木県大田原市寒井(さぶい)」という、名前だけで凍死しちゃいそうな住所なのです。
 気象庁の観測によれば、直近の2020年、大田原市で最も低い最低気温を記録したのは1月9日の氷点下10.3℃です。室内の気温も5℃を下回っていたでしょう。寒さの観点から見れば黒羽刑務所は大ハズレです。凍死するんじゃないかと心配になるレベルです。工場出役の際に屋外を行進していくのですが、極寒と言っても過言ではないと思います。2~3分で手の感覚がなくなります。
 ちなみに北海道や東北地方などの寒冷地方にある刑務所は、屋外に出ることなく工場に出役できるようになっています。


話は変わりまして、まずは拘置所と刑務所ってどう違うの? そこから行こうと思います。


※上記の菓子についていくらでも購入可能とありますが上限がありました。私がいたときは 3,000円くらいだったと思います。お詫びの上、訂正させていただきます。


   私が東京拘置所に収監されていたのは、ちょうど夏真っ盛り。そして、なんと東京拘置所は冷房が入る。本当に驚きました。ただし、部屋の中に空調設備があるのではなく、廊下にかかっているだけです。つまり、職員用です。それでも隙間から冷たい風が入ってきて涼しかったのです。夜は毛布を1枚かぶって寝ていました。


 このまま東京拘置所に落としてくれないかなぁなんて思っていたが、そんなうまい話などあるはずもなく、黒羽刑務所へ移送となりました。


 バスが進むにつれて、何もないところを走るようになりました。本当にこんなところに刑務所なんてあるのか? と疑いたくなるような場所にありました。




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8. 脇見・雑談・無断離席は厳禁です


 刑務作業では絶対に守らなくてはならない3つの決まりがあります。それは


                            脇見厳禁、雑談厳禁、無断離席厳禁


です。これらは、作業をする上で絶対に守らなければならない鉄の掟のようなものです。少し説明を入れます。


【脇見】
 作業中は、自分の手元以外は絶対に見てはいけないということです。肩が凝っても、首が痛くても、時計が見たくても絶対に顔を上げてはいけません。極端な話、隣で殴り合いの喧嘩が始まったとしても、顔を上げることは反則行為です。
 幹部の一部の連中は、工場の扉を開け締めする際、必要以上に思い切りしめたりして、わざと大きな音を発生させるやつもいます。それで、反射的に顔を上げてしまったら、脇見をしたとの理由で連行されます。出所までに何度か見ました。本当にかわいそうです。


【雑談】
 刑務官から許可を得ずに他人と話(交談)をしてはいけないということです。また、話の内容は作業に関することでなければなりません。外国人においては、職員がその内容を理解できるように、日本語で話さなくてはなりません。
(外国人の交談については黒羽刑務所の場合です)。


【無断離席】
 自分の席や持ち場を、許可を得ずに離れてはならないということです。作業内容によっては確かにいちいち 許可をもらっていられないという場面もかなりあります。それでも、見つかれば立派な反則行為です。
 また、舎房(特に雑居房)において決められた位置に布団を敷かなかったりした場合も無断離席となります。いずれも調査・懲罰の対象になります。


 違反が見つかった場合は、調査・懲罰となります。作業時間中はとにかく作業に集中することだけを考えましょう。


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9. 殴り合いの喧嘩が始まった

 刑務所に入所して2ヶ月が経った頃だったと思います。運動場で他愛もない話をしていました。今日のエサなにかなぁとか、面白そうなテレビないかなぁとか・・・本当にどうでもいい話。まぁ、それ以外に話す話もないんだよなあ・・・・ はぁ~~。ちなみにエサとは飯のことです。もちろん揶揄してこのような表現を使っています。


んっ??


あれは何だろう?


 すぐにほとんどの人が異常に気づきました。喧嘩が始まっていたのです。
 喧嘩と言っても口論ではなく、殴り合いになりそうな感じでした。


と思っていた次の瞬間、30人くらいの刑務官がダッシュでやってきて、あっという間に制圧してしまいました。職員が非常ベルを発報していたのでしょう。聞けばそんなに珍しいことでもないらしいのです。


 ちなみに喧嘩をした受刑者が連行される様子を見てはいけません。反対側や床下を向くように指示されます。


 しかし一番ビックリしたのは、あんな大人数の刑務官がどこからやってきたのかということです。もちろん、このような自体に備えて、すぐに出動できる体制が整っているのでしょうが・・・。


 一番早く現場についたオヤジには金一封でも出るのではないかという噂があるくらいです。
    喧嘩は両成敗が基本なので、両者とも座った(懲罰になった)と思われます。
  
刑務所のおかしなルール 

 一般社会では、例えば同僚が口論を始めたとしたら周囲の人が止めに入ると思います。殴り合いなら言わずもがなです。
 しかし、刑務所では原則として、口論や喧嘩をするのを止めに入ってはいけません。言い方が悪いかもしれませんが、殆どの場合、見て見ぬ振りをします。これは、止めに入った人が、喧嘩や口論に加担したとみなされかねないためです。刑務所内ではいかなる理由があろうとも喧嘩両成敗なので、喧嘩等に加担することは非常に大きなデメリットとなってしまうのです。即座に連行され、調査となる場合がほとんどです。


 懲罰になると一般の受刑者から隔離されることになります。朝から夕方までず~~~~~~~~~と座っていなくてはなりません。これが思いの外キツイ。
これは閉居罰と言って最短で5日間、最長は60日間です。真冬に座ることになったら悲惨この上ないでしょう。暖房なんてありませんから。真冬の室内の気温は昼間でも7~10℃くらいです。雪が降れば更に下がります。


 加えて、喧嘩して懲罰になった2名は、それぞれ別の工場に飛ばされることになります。つまり一からやり直しです また、ふたりが2度と同じ工場にならないように出所時まで配慮されます。


 誤解のないように言っておくと、懲罰になっても元いた工場に戻ってくる場合もあります。眉毛を抜いたとか、就寝時間後に本を読んでいたなどの、比較的軽い違反の場合かつ相手がいない場合です。また、その種の違反が初めてであることも条件でしょう。
  
  結局は工場担当の職員が引き受けるか否かなのですが、内容が軽微でひとりで反則行為をした場合は、戻ってくることが多いと思います。


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