4年間、黒羽刑務所にいた人のブログ

        私が刑務所で服役した4年間を振り返ります

13. おっさんたちがお菓子の写真を見て喜んでいる・・・

集会?でお菓子が食べられる? 


 ある日の昼食後、計算係(受刑者で主に作業時間の計算を行う係)からお知らせがあり、何でも来月の集会のお菓子が決定したので、購入するかどうか決めておくようにとの伝達がありました。集計は明日取るとのことです。


 いや!皆さんよく考えましょう。ただの菓子ですよ。しかも自分の金で買うのですそしてかなり高い。


 刑務所では優遇区分が3類以上の受刑者にはお菓子を買う権利が与えられます権利が与えられるだけで無料ではない所がミソでしょうか。しかし、ほとんどの人はこの集会のお菓子を楽しみにしています。懲罰を受けると類が下がって食べることができなくなってしまいます。また、集会ではお菓子と合わせて映画の上映があります。黒羽刑務所では3類集会については参加人数が多いためか舎房の中で行われていました。


 私ははじめ、 バカじゃねーの!?と思いました。口には出しませんでしたが、その異様な光景に驚きました。いい年したおじさんたちがお菓子に夢中になっているんです


 当初、私は、無料で菓子がもらえるものだと勘違いしていたのですが、そうではなく、優遇区分が3類より上の人が買えるお菓子でした。私はまだ類がついていない状態で、実質5類なわけです。あと2ヶ月はお預けです。でも、そんなにお菓子を食いたくなるかなというのが正直な感想でした。


 ただし、この考えは2ヶ月後に一変しました。すみませんでした。集会で食べるお菓子には魔物が棲んでいます。一度食べたら最後、やめられなくなります。このために、みんな真面目に生活するのです。お菓子が刑務所の治安維持に役立っていると言っても過言ではありません本当です


 以下に、集会で食べられるお菓子の例(実際に出たもの)を載せてみました。これで¥500です。スーパーで買えば¥300くらいでしょうね。刑務所が定価で買っているはずがないので差額はどこへ行ったんでしょうかね? 不思議ですねwwww。 





もくじ①:https://20692793118279.muragon.com/entry/35.html
もくじ②:https://20692793118279.muragon.com/entry/36.html
もくじ③:https://20692793118279.muragon.com/entry/60.html


14. 作業報奨金について①

 
作業報奨金とは
 懲役刑を言い渡された者は、当然のことながら刑務作業をすることが義務付けられています。そして、僅かな金額ではありますが「作業報奨金」という形でお金が支給されます。支給といっても現金を渡されるわけではありません。月に1回、前月分の作業報奨金額の告知があります。なお、刑務所における「作業報奨金」の締日は月末です。
 作業報奨金は出所後の生活資金に充てることとされていますが、日用品や書籍の購入に使用することができます。ただし施設によっては作業報奨金の使用に制限がかけられている場合があります残額は釈放時に現金で支給されます


作業報奨金の計算方法
    作業報奨金の金額は「作業時間」と「等工」と呼ばれる階級制度によって決定されます。どの受刑者も初めは10等工から始まります。10等工の時給は7円30銭です。1ヶ月すると9等工となり、時給は9円40銭にアップします。
 書いていてもきりがないので表にまとめてみます。


表1


表2:表1より1ヶ月の作業報奨金の目安を計算したもの


 (表2)の月の作業時間は120時間としました。実際の1ヶ月の作業時間は110~120時間程度が多いためです


 つまり最初にもらえる報奨金は最大でも880円くらいです。ただし、いつアカ落ちしたか(被告人から受刑者になったか)や、いつ刑務所に移送になったかは人それぞれであるため、刑務所での最初の作業報奨金の金額は個人差が大きいはずです。800円以上という人もいれば数十円という人もいるはずです。
  
(表1)を見るとA作業、B作業、C作業とあることが分かります。その説明をしますと


A作業:
①職業訓練または外部通勤作業
②炊場または営繕工場における作業
③作業用機械若しくは器具を用いて物品を製作する作業、 比較的高度な 知識・技能等が必要な作業
④班長または指導補助として作業を行なっている者
⑤看護係、理髪係、居室経理係 及び 衛生係


B作業:
①A作業及びC作業以外の作業


C作業:
①居室内における作業    
②養護工場における作業


に分類されます。


 それでは次に、等工が上がるにはどれくらいの期間がかかるのかを見ていきましょう
(表1)を見ればわかるように例えばA作業の者が1等工になるまで、(1+1+2+3+4+5+6+7+8=)37カ月かかります。しかもこれは最短の場合で、途中で懲罰を受けると等工が下がり、1等工への期間は更に延びます。
  また、B作業やC作業に従事している受刑者は、等工の上限が設定されているため、作業が変わらない限り、5等工や3等工で作業報奨金が頭打ちになります。精神安定剤などを服用しているとA作業にはまずなれません。


 (補足)
 具体的にどの作業がA作業、B作業、C作業になるのか上の説明を見ただけではわかりにくいと思いますので補足させていただきます。黒羽刑務所ではかぶっている帽子の色で判断することができます。なお、経理工場の受刑者はすべてA作業らしいです。よってここでは一般工場でのお話となります。


A作業:帽子の色が赤色または黄色の受刑者
 具体的には、計算係衛生係資材係班長・運搬係機械工


B作業:帽子の色が緑色の受刑者
 主に座業(座り仕事の人)。一部検査係で立ち仕事の人もいます。
※C作業は前述の通りです。


 つまり、必ずしも「立ち作業」=「A作業」というわけではありません。黒羽で受刑した方でも勘違いしていた方が多いのではないでしょうか? 座り作業でも機械工であればA作業となります。
 食事に関しては、立ち作業はA食、座り作業はB食となっています。



作業報奨金ってもう少し貰えるんじゃないの?・・・
 実際には、作業をしっかりやっている受刑者に対しては、工場担当の職員から「ヅケ」がつきます。これにより、加算計算され、実際にもらう金額はもっと多いという場合が多々あります。
 実際には1等工になれば10,000円前後となることが多いようです。


 また、舎房にて配食を行う配食係に任命されることがあります。8時間の作業時間外で配食は行われますので追加で作業報奨金を頂くことになります。
 ただし、舎房配食は金額以上のデメリットもあるので、やりたがらない人が多いです。
これについてはいずれ書こうと思っています。


 炊場で作業する受刑者など、一日の作業時間が8時間を超えた場合も、報奨金が増額されます。そこは娑婆の残業代と同じような仕組みとなっているようです。


 気をつけなくてはいけないのは、懲罰を食らうと等工が下がることがあるということです。そんな事にならないように真面目に作業に取り組みましょう。



※記事の作成に当たり、下記の資料を参考にしています。


 作業報奨金に関する訓令 - 法務省
 http://www.moj.go.jp/content/001174893.pdf



もくじ①:https://20692793118279.muragon.com/entry/35.html
もくじ②:https://20692793118279.muragon.com/entry/36.html
もくじ③:https://20692793118279.muragon.com/entry/60.html


15. 作業報奨金について②


 よく刑務所は8時間労働で残業がないと言われています。確かに一部の工場を除き8時間以上作業することはありません。もっと言えば1日8時間作業することもほとんどありません


 刑務所では受刑者一人ひとりが月に何時間何分作業をしたかについて「日課表」という表を作成することで管理しています。これをもとに作業報奨金が算出されます。


 作業に充てられている時間は確かに8時間なのですが、運動・入浴・面会などの時間も作業時間中に行うことになっており、これらの時間は作業時間から減算されます。運動は毎日実施されるので実際には8時間作業する日はまずありません。


 黒羽刑務所での日課表は以下のような感じになっています。ただし、私の記憶になんとか残っていたものをアウトプットしただけですので、間違いがある可能性があります。その点ご承知おきください・・・。


◆1日の作業時間は10分間単位で計算されます。10分未満の端数が生じた場合には、4捨5入して計算されます。


◆1ヶ月の作業時間の単位は1時間単位で計算されます。1時間未満の端数が生じた場合には、30分未満の時間は切り捨て、30分以上60分未満の時間は、1時間として計算します。



             作業報金額=52.9✕117+52.9✕117(70/100)
                            =52.9✕117(1.0+0.7)=52.9✕117✕1.7=10521.81(円)


「説明」:この人物の時給(基準額)は52.90円です。この月の作業時間は117:00なので、52.90✕117:00=6189.30円となります。これに「ヅケ」が加算されます。
 ヅケは4+3=7となっています。この「7」という数字は7割り増しを表しています。
よって、付けによる加算額は6189.30✕0.7=4332.51円となります。
 上記の2つの金額を足し合わせて 10521.81(円)が作業報奨金となるわけです。
           
作業区分・等工:どの作業をしているか(A作業、B作業、C 作業)と現在の等工です
工場名:所属している工場です
基準額:シャバで言う時給のことです。
作業時間:1日に実際に作業した時間です。◯月3日なら6時間40分の作業時間です
運動は1日40分(移動時間を含む)で作業時間にはなりません。実際の運動時間は30分 です
・この人物の場合、1ヶ月の作業時間の計は117時間00分となります
・面会や医務などで工場にいなかった時間も8時間から引かれます
入浴時間に合わせて終業時間が変わります。そのため作業時間も短くなります
・左下の部分(4+3=7)がいわゆる「ヅケ」です。足し算した数字が大きいほど金額が 加算されます
・用紙右下に併課:配食係とあります。つまり、この人物は舎房の配食係であることがわかります。舎房にて配食作業に従事した場合は、作業時間外に作業をしているので刑務作業に加えて作業報奨金がもらえます。配食係としての「日課表」は上記の日課表とは別に作成されます。


 この表は刑務官が作るわけではなく、各工場の計算係と呼ばれる受刑者が毎日一人ひとりの作業時間を手作業で計算・記入しています。パソコンなどはありませんので電卓で計算しているようです。
 この表をもとに作業報奨金の計算を行うのが計算工場です。黒羽刑務所では中央計算工場と呼んでいました。そこにはパソコンがあります。
  
 作業報奨金の金額は右下の辺りに印字されます。受刑者はそれを確認して左手の人差し指で指印を押します。その際、それ以外の部分は見えないようにされる場合が多いです。ですので受刑者は「ヅケ」がどれくらいついているかは分かりません。
 「ヅケ」見せるか見せないかは施設によって異なるようですが、黒羽刑務所では見せない職員がほとんどでした。


刑務所豆知識           【指印器】
          

                                         



  指印器はポリスメイトとも呼ばれ、警察でも使用されています。刑事施設では指印がハンコの代わりになります
 法務省管轄の刑務所や拘置所等では「左手の人差し指」を使います。警察では県警によりまちまちで右手・左手とどちらの場合もあります。



もくじ①:https://20692793118279.muragon.com/entry/35.html
もくじ②:https://20692793118279.muragon.com/entry/36.html
もくじ③:https://20692793118279.muragon.com/entry/60.html