4年間、黒羽刑務所にいた人のブログ

        私が刑務所で服役した4年間を振り返ります

56 薬を飲むのにも作法があります

 以前、刑務所(黒羽刑務所)の医療は最低限のレベルにも達していないと述べましたが、今回は刑務所の薬事情に関してお話したいと思います。


 特に刑務所はやることがないので、休日ともなれば薬で遊ぶ輩も一定数います。一言付け加えるなら少数派です。それだけが救いです。万一バレれば相当重い懲罰を科されます。


 最も一般的なのは、精神安定剤や睡眠導入剤などが処方されている場合、それを飲んだふりをして溜め込むというやり方です。


 黒羽刑務所に限らず一度に大量の服用によって健康に被害が出るような薬は、刑務官が管理しており、基本的には3食後に投薬を受けることになります。ですので、そうでない薬は自分で所持することができます。


 睡眠導入剤は就寝時間の2時間前くらいから、刑務官が各居室を回ってきます。睡眠薬に限らず投薬の流れとしては


 ・刑務官:〇〇室投薬(とうや~く)と言って居室前までやって来る。
 ・受刑者投薬カードと水の入ったコップを持って食器口前に膝立ち状態になる。
      ※カードには称呼番号と受刑者のフルネームが書いてある。
       もちろん、誤投薬を避けるため。
 ・受刑者:XXX番〇〇です。2種2錠お願いします。と申しでる。
      ※2種2錠とは薬の種類が2つでそれぞれ1錠ずつですという意味。
 ・刑務官:確認の上、受刑者の手の上に薬のシートから薬のみを落とす。
 ・受刑者:1.薬を舌の上に乗せ、刑務官に見せる。薬を受け取った手も見せる
      2.口に水を含み薬を飲む。
      3.飲んだら口を開け、舌の上と舌の内側、コップの中を刑務官に見せる。
 ・刑務官:刑務官が薬がどこにもないのを確認して、ヨシ! といって投薬完了。 


といった感じで書いていても面倒なことを一人ひとりに行っています。刑務官って本当に大変ですね。


    一度間違えて、他の人の薬を飲ませてしまったことが私の部屋の近くであり、飲ませられた本人は、強制的に吐かされていました。医務の職員が血相を変えて数人走ってやってきて、無理やり吐かされているのを目の当たりにして(実際にはよく見えませんでしたが)「俺じゃなくてよかったぁ」と肩をなでおろしたものです
 口の中に手でも突っ込んで吐かせたのでしょうか。後で聞くとなんでもない胃薬だったようで、そのままでも問題ないだろと思ったものです。


 また、ロキソニンのようなどこかが痛いときに飲む薬、世間では頓服薬なんて言いますが、黒羽刑務所では「訴え時薬」とよんでいました。もちろん意味はわかりますが、普通に頓服薬で良くないかと何度も思ったものです。



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57 刑務所は3年目から辛くなる

刑務所は3年目からが勝負


 私は懲役刑を約4年間受けた末に仮出所しました。ここでは刑務所内における時間の流れの実体験をお伝えしようと思います。


 結論から言ってしますと、受刑者となって3年を過ぎた辺りから、時間の流れが遅く感じたり、可能であれば環境を変えたいと思うようになります。一体なぜでしょう?


1年目
 1年目は分からないことだらけです。まずは刑務所独特の遵守事項を守りつつ、刑務作業に従事することになります。一言で言ってしまえば、それまでの環境との変化が大きすぎて、時間等を気にしている余裕さえもなくなります。
 刑務所にはクラブ活動があるとか、工場対抗のソフトボール大会、秋の運動会、免業日の慰問行事など、刑務所の行事に振り回されるような感じになります。6ヶ月間真面目に過ごしていれば、自弁でお菓子を買えるようにもなります。
 これらの刑務所が定めた1年間のスケジュールがたくさんありますので、1年目は時間の流れが早く感じました。


2年目
  2年目になると、刑務所の行事ごとについては大抵理解できているはずです。ですので、「あ~。あれからもう1年経ったのか~。思っていたより早かったなぁ」と行事ごとに思い出すことになります。あとから入ってきた後輩受刑者に対しても、余裕を持って接することができるようになります。


3年目
 残念ながら3年目に突入すると、刑務所のシステムだとか各行事についてかなり詳しくなってしまします。各人の刑期にもよると思いますが、私の場合は3年目辺りから、なんとか環境を変えられないかと考えるようになりました。理由はよくわかりませんが、この自由のない生活、単調極まりない生活をなんとかして変えられないかと思うようになりました。
そこで目をつけたのが「職業訓練制度」です。懲罰を受けることもなく周りの環境を変えるのは、現実的にこの選択しかありませんでした。


 以前にも、「職業訓練のススメ」というタイトルで記事を書いておりますが、次回以降、この刑務所内の職業訓練について詳しく書いていこうと思います。



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58 あなたは死刑制度に賛成・反対のどちらですか

今回は真面目なテーマになります。
あなたは現在の日本の死刑制度に賛成ですか? それとも反対ですか?


日本国内での数あるアンケートでは「賛成」が「反対」を大きく上回っています。
それはなぜでしょうか。


一番の問題は「死刑についての情報が少なすぎる」からではないでしょうか。国民がよく知らなければ、議論ができるはずもないでしょう。また、日本では処罰感情が強い傾向があり、結果、死刑賛成派が大多数を締めているのでしょう。


しかしながら、私も確定死刑囚の方とお話ししたこともありません。よって、偉そうなことなど言えないことは肝に銘じております。


死刑制度を廃止すると終身刑が導入される?
仮に死刑制度が廃止され、仮釈放の可能性のない終身刑が導入されたとしましょう。元受刑者の視点からこのことを考えると様々な問題が起こりそうです。


懲役刑を科すべきか
 まず思いつくのがこれです。懲役刑つまり刑務作業をどうするのかです。現行の無期懲役受刑者は、仮釈放に一縷の望みをかけて刑務作業に励んでいます。真面目に作業・生活しなければ、仮釈放の対象にならないからです。
 仮釈放の可能性のない終身刑としてしまうと刑務作業なんか馬鹿らしい。どうせここで死ぬのだからという考えを持つ受刑者が多くなるのは想像するまでもありません。自暴自棄になり、精神的にも正常な状態を保てなくなるのではないでしょうか? 精神的に問題を抱えてしまった場合、その治療費は当然税金です。


懲役刑を科さないと・・・
 懲役刑を科さないと何も生み出すことのない受刑者となります。一般の受刑者は作業をすることで、得られたお金の極一部は「作業報奨金として自分に返ってきます」が大部分は国庫に帰属することになっています。
 つまり、終身刑受刑者が刑務作業をしないとなると、亡くなるまで、すべて税金で面倒を見ることになります


収容施設の治安秩序維持をどうするのか
 上述したとおり、終身刑の受刑者は様々な問題を抱えそうです。無期懲役受刑者と区別する必要があります。新たに終身刑受刑者用の刑務所や職員の配置が必要になるかもしれません。


以上のような理由から、私は死刑制度に賛成です。終身刑相当の被告人であれば無期懲役刑として、仮釈放を認めなければよいだけなのです。