刑務所には月に2回、矯正指導日というものがあります。施設によっては矯正処遇日と呼ぶこともあるそうです。曜日は施設ごとに異なる場合が多く、黒羽刑務所では金曜日に実施していました。

矯正指導日とは？
　単刀直入に言ってしまえば、犯した過ちの反省・更生教育・学習を行う日です。刑務作業は行われません。よって、居室からは基本的には出ることはありません。（面会や医務を除く）。
　ただし、居眠りには注意しましょう。見つかると申し送り簿（舎房での生活状況などを工場担当に報告するための書類のようなもの）に書かれて次の出役時にオヤジに頭を下げに行かなくてはなりません。１度ならいいのですが２度３度となるとオヤジも切れます。最悪の場合、調査・懲罰になる可能性があります。
　また、壁により掛かるのも禁止です。見つかると居眠りと同じようなことになります。

矯正指導日に行われること（黒羽刑務所の場合）
　①ワークブック
    ・黒羽刑務所の場合はワークブックが配られます。テーマに沿って自己学習を行います。
       ちなみに小学館が作った教材でした。
　②教育的テレビの視聴
    ・教育的な内容のテレビの放映があります。NHKの「歴史秘話ヒストリア」や「プロ              フェッショナル 仕事の流儀」の放送が多かったと記憶しています。テレビ放映が始まっ　   たら、筆を置きテレビを見ることに集中します。
          今でも この番組は放送されていますが、「ポ～～ン」というあの音を聞くとなんとも        言えない気分になり、刑務所生活を思い出してしまいます。
   ③ 学習・読書
　・ワークブックが終わった者は読書（小説が基本）や学習の時間となります。ただし、漫　　画本や娯楽雑誌は読んではいけません。しかしながら、官本の漫画本はなぜか読んで 　　いいことになっていました。意味がわかりませんね。

※官本：工場に備え付けられている書籍のこと。毎週、決まった日に貸与が行われる。
借りたくない人は借りる必要はない。図書室のようなイメージを持たれるかもしれないが、こじんまりとした本棚が工場の隅にあるだけである。近隣の図書館から寄贈されたものが多い。読み方は「かんぼん」または「かんぽん」。

    ④ラジオ視聴
　・様々なラジオが流れます。犯罪被害者の声だったり、受刑者の懺悔だったり、突然方向　　性を変えて童話が流れたりもします。自分の犯罪に関係する内容以外のことにはあまり　　共感が持てませんでした。一番放送頻度が高かったのは犯罪被害者の声です。「過ちは 　　もう再び・・・」。入っていた方ならわかると思いますがいろいろな意味で辛い放送で　　した。
　⑤運動　
    ・決められた３０分間、居室内で運動することが許されています。　

　このように受刑者の更生のためにわざわざ刑務作業の日を削ってまで、受刑者の更生に資する内容の指導日が設けられています。私も本当に心を入れ替え、まっとうな社会人として生きていけるように修養することを誓います。

　とはじめの頃は思っていましたが、この「矯正指導日」が存在する最大の理由は、刑務官が休みを取りやすくするためのものだとしばらくしてから気づきました。平日・休日・夜勤のある刑務官の仕事はかなりハードです。仕方がないと言えばそうだと答えざるを得ませんが・・・。

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　刑務所では抜き打ちで室内検査と荷物検査が実施されます。これを捜検（そうけん）と呼びます。
　黒羽刑務所の場合、基本的に工場出役中、つまり居室に誰もいないときに実施されます。

これによって遵守事項違反が判明して調査・懲罰のにアガる受刑者が多くいます。例をあげますと

　1. 朝食に出るふりかけを隠し持っていた（不正配食）。
　2. 石鹸が入っていた紙製の箱を別の用途で使用していた（不正製作）。
　3. 他人の本を持っていた（雑居房）（不正授受）。
　4. 備品が壊れているにも関わらず、申し出ていなかった（汚損行為等の疑い）。
　5. 柄の部分が折れた歯ブラシを所持していた（不正製作等の疑い）。
　6. 雑誌を切り抜いて隠し持っていた（物品不正使用）。
　7. 処方されていない他人の薬を持っていた（不正授受）。

などなど、挙げればキリがありません。一部を紹介しただけです。

　捜検は本当に不意打ちで入るので常に気が抜けません。順に説明していきます。
「1」ふりかけに関しては、配食された食事については、そのときに喫食しなければなり　　　ません。自業自得です。ただし、これは気に入らないやつを雑居から追い出す方法にも 　　使われています。本人が気が付かないように、そいつの私物棚などにこっそり入れてお　　くわけです。しかし、他人がやったという証拠がないため、その場合でも調査・懲　　　　罰となります。部屋全体で口裏合わせをしてから行います。立派な々いじめなのです　　　が、本人に問題がある場合が多いと思います。

「2」紙製の石鹸箱の箱にそれ以外のものを入れたりしてはいけません。箱はすぐに廃棄し　　ましょう。石鹸の箱は石鹸を入れるためのものであるから、それ以外のものを入れて使　　用してはならないという意味です。

「3」言い訳不能の状態になってしまいます。雑居房では就寝前に貸し借りをしてそのまま   　　 の状態でないか確認するようにしているところが多いと思います。

「4」これも比較的よく見受けられます。刑務所では定期的に転室が行われますので、必ず　　 不備がないかチェックします。すぐに申し出ればお咎めなしです。

「5」歯ブラシの柄に何が問題あるんだと思われるかもしれませんが。柄の部分をクレン　　 ザーなどで研磨し丸くして「玉入れ」に使われる恐れがあるからです。

「6」何でもないことのように思えますが、刑務所では切り抜きは厳禁です。また、クロス　　ワードの雑誌などにも絶対に直接書き込んではいけません。ノートに写してから楽しみ　　ましょう。

「7」これは完全にアウトです。健康に害を及ぼす可能性もありますので、提供した側も厳　　しく罰せられます。

　捜検が入った後は居室が荒らされたような状態になっていますのですぐに分かります。何度経験しても、自分の私物等が荒らされているのを目の当たりにすると良い気分はしませんでした。

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刑法第28条
懲役又は禁錮に処せられた者に改悛の状があるときは、有期刑についてはその刑期の三分の一を、無期刑については十年を経過した後、行政官庁の処分によって仮に釈放することができる。
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　刑務所では仮釈放は「ピン」という単位？で語られることがしばしばです。
例えば懲役６年の受刑者が１年の仮釈放をもらえる見込みになったと仮定しましょう。

　1 / ピン＝（もらった仮釈放の期間または見込まれる仮釈放の期間）÷（自分の刑期）

で計算されます。
この場合、６年に対しての仮釈１年なので１÷６なります。分子を１になるように計算したときの分母の数が「ピン」となります。ですのでこの場合は６ピンとなります。

　分かりやすく言うと服役期間の内の6分の1を仮釈放期間にするという意味です。

　何ピンもらえそうですか？　
　　ほぼ６ピン。あんまりもらえなかったなぁ・・・。
　そうですか。でももうすぐ娑婆じゃないですか。
　　まあそうだよね。後は足引っ張られないようにおとなしく過ごすわ。

と言った感じで会話では使います。以前、仮釈放になるのは、「初犯刑務所であれば刑期の8割前後の消化が目安」と言いました。刑期の２割が仮釈放の対象となるので、この場合は
　　  1 / ピン＝（もらった仮釈放の期間または見込まれる仮釈放の期間）÷（自分の刑期）
　　　　　＝ 0.2÷1.0＝1/5

よって分母の数を取って５ピンとなります。つまり、ピンの数が少ないほど仮釈放がもらえたということになります。
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　話はそれますが、堀江貴文さんや鈴木宗男さんは異常なほど仮釈放をもらっていましたね。堀江さんが仮出所されたときは工場のほとんどの人が「さすがにおかしくね？　不平等すぎる」と言っていましたね。堀江貴文さんや鈴木宗男さんがどれくらいの刑期を持ち込みで入所したのかわからないので、正確なことは言いづらいのですが、昨今、3ピン前後で仮釈放になるなど絶対にありません。刑務所としても様々な要因から早く出所してもらいたかったのかもしれませんね。
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　話を戻します。犯罪の内容や弁済が済んでいるかなど、人それぞれであり一概には言えないのですが、私が4年数ヶ月、刑務所で体験した感じでは５～9ピンで仮釈放となる人が多かったと思います。
　「シャブシャブ」（覚せい剤の使用・所持の罪で執行猶予中にもう一度同じ罪名で捕まった人のこと）と呼ばれる覚醒剤取締法違反の人の場合は、仮釈放は総じて良好で4.5ピンという人もいました。犯罪を犯してはいますが、実質的には被害者がいないというのが大きな理由と思われます。
   一方、強盗や強制性交（強姦）といった被害者がいる場合の仮釈放はお世辞にも良いとは言えません。

　私が知る限りでは一般工場における仮釈放の実態はこのような感じです。
    なお、経理工場については情報が少なくよく分かりません。すみません。もし情報を提供していただける方がいらっしゃいましたらよろしくお願いいたします。

　また仮釈放の対象者となるには、以前書いたように
　　・ 悔悟の情が認められること。
        ・更生の意欲が認められること。
　　・再犯の恐れがないと認められること。
　　・社会の感情が仮釈放を是認すると認められること。
　　に加え
　　・身元引受人がいること。
　これらに一つでも当てはまらない項目があると自動的に満期出所となります。

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