4年間、黒羽刑務所にいた人のブログ

        私が刑務所で服役した4年間を振り返ります

1. ついに受刑者になってしまった・・・


まずはじめにおことわり
 私は栃木県にあった黒羽刑務所(2022年3月31日に閉庁)に収監されていました。刑務所は施設ごとに決まり事が少しずつ異なります。これは「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」を元に様々なルールが決められているものの、細かな部分に関しては刑事施設の長(実際には処遇部門の部長や主席・統括あたりの幹部)が裁量で決めていることに起因します。そのため、施設によって処遇に差が生じるものと思われます。
 よって、上記幹部が異動となって新しい幹部となった場合、突然、刑務所内の処遇が変わったりします。一例を上げると、これまで使い捨てカイロの使用が認められていたのに突然これが使用不可になる作業報奨金で書籍の購入ができなくなるなど例をあげれば切りがありません。
 また、受刑者は刑務所内を移動する際に行進をするのが一般的です。この際、歩調を合わせるために刑務官が号令をかけますが、この号令が施設により異なることです。私が聞いた話では、黒羽刑務所では「左左左右」と掛けていたのに対して、他の矯正施設では「いちにいちに」という号令を掛けることがあるようです。(あくまで聞いた話ですので本当かどうかはわかりません)。
 このブログでは私が黒羽刑務所で体験したことを中心に書いており、他の施設での処遇とは異なる部分が多々あると思います。この点をご理解いただいた上でブログを読んでいただけましたら幸いです。よろしくお願いいいたします。



実刑判決


 私が勾留されていたのは東京拘置所です。裁判で懲役5年の実刑判決を言い渡され、本当に人生のどん底にいたと思います。 5年間って小学1年生が6年生になるじゃないですか。長すぎるよ !!! ヽ(`Д´)ノプンプン なんて感じでもう完全に現実逃避していました。精神的にも不安定になり、精神安定剤を頂いていました。
 5年・・・本当に長い。もちろん自業自得なのは承知です。
 とりあえず控訴する気はなかったので、刑の執行開始日までとにかく菓子類を食いまくりました。好きなだけ菓子が食べられることも、もうすぐできなくなってしまいます。


 そして14日後、既決房に転房しました。ムショ用語では被告人から受刑者となることを「アカ落ち」と言います。会話では「〇〇さん、アカ落ちしたのいつですか?」という感じで使用します。


 また、最近の刑務所では、収容されている人たちのことを「受刑者」と呼ぶことはあまりありません。これも「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」の影響です。文書などでは「被収容者」という表現を使っています。ただし、刑務官が受刑者を呼ぶ場合は「名字」で呼ぶことが大半です。同一姓の受刑者がいる場合は称呼番号+名字をセットにして呼びます。なお、このブログでは両方の呼び方を使わせていただきます。


【豆知識】
勾留と拘留の違いについて 

時折、警察に逮捕され現在「拘留」されているというような表現を目にしますが、それは「勾留」されていると表記するのが正解です勾留拘留の違いを知りましょう。拘留は「1日以上30日未満」の一定期間、刑事施設に収監する刑罰です。ですから懲役刑、禁固刑と同じカテゴリーになります。なお、拘留刑が言い渡される被告人は日本全国でも年に数えるほどしかいないようです。



工場
 工場と聞くと機械やラインなどがあり、大勢の人が作業に従事して製品を生産・製造したりするところとイメージされる方が大半だと思います。刑務所においてもそのような場合もあるのは確かなのですが、刑務所内で使う「工場」という言葉は「定められた刑務作業をする場所・集団」という意味になります。学校のクラスのようなものです。
 パソコンを使うような事務的作業を行う場合でも、〇〇工場と呼称します。
 刑務所内を歩き回る内部の清掃等を行う作業でも、〇〇工場と呼称します。


拘置所・刑務所には時計がありません
 あまり知られていないことかもしれませんが、拘置所・刑務所には時計がありません。
刑務所では工場(刑務作業をする場所)にはあるのですが、作業中に顔を上げてみることは「脇見」という反則行為に該当し、調査・懲罰の対象となります。ですから、時計がないのも同然というわけです。そして、時計がないのは自分の舎房です。あなたは時計を全く見ないで1日でも過ごしたことはありますか。おそらくないのではないでしょうか。それを何年間も強いられるわけです。
 ついでに付け加えるとトイレットペーパーやティッシュペーパーといったごく当たり前のものがありません。洗顔料、歯間ブラシ、鏡、クシがありません。季節を問わず蛇口からお湯が出ることはありません。一般家庭に常備されている大部分がありません。ただし、共同室においては何故か鏡がある場合があります)


 刑務所の房には最低限の生活に必要なものしかありません。もっと言えば生活全般、食事、医療などすべてが本当の最低限です。刑務所に入る際には一般社会の常識を一切合切捨てる気持ちでいきましょう。

 刑務所では何時何分から〇〇を実施するというように、分単位でスケジュールが決められているのですが、時計がないのでほとんど直感と職員の号令・チャイム等で行動しています。個人差があると思いますが、私にとっては最初の数ヶ月、かなりのストレスになりました。就寝時に見る夢は時計を買いに行ったり探し求めているものがとても多かったです。そして、夜中に目が覚めても何時なのか全くわかりません。少なくとも私にとってはきつい経験でした。
 なお、警察署内の留置場では時計が設置されていることが大半です。ただし、入っている房によっては位置の問題で見えなかったりもします。私は運良く時計が見える場所に勾留されていたので、これについては問題ありませんでした。なお、時計が見えない部屋の場合は「今、何時ですか?」と聞けば教えてもらえることが多いと思います。
 
領置調べ


 判決が確定し受刑者となると領置調べなるものがあります。被告人(推定無罪)と受刑者では所持できる物品に大きな差があるので、今後、所持できるものとそうでないものを分ける作業をするわけです。


   領置調べは「新入調べ室」と名付けられた室内で行うことが多いのですが、東京拘置所のそれは体育館以上の広さがあるので「新入調べ講堂」という名称になっています。あの広さを「室」と呼ぶのは流石に無理があります。


 そこで、刑務官が、受刑者が所持して良いものとそうでないものの選別をかなり乱暴に行います。これは刑務官の仕事なのですが、ものすごい上から目線でクソ面倒くさそうに「オメェ、これいらねーよな?廃棄すんぞ!」というセリフが終わる前に廃棄箱に入れようとしていました。「それは手紙が入っているのでやめてください」と言ってなんとか取り戻しました。


身体検査


 領置調べのあとは素っ裸にされます。刑務官の目の前に立ち指示を受けます。
「竿を持て~。上に上げろ~。下に下げろ~。よ~し玉入れてねえなぁ? 後ろを向いて屈め。ケツを広げろ~」と言った感じです。身体検査に限らず言えることなのですが、刑務官は受刑者の体を理由もなく触ろうとはしません。ただし、「検身」という簡単な身体検査を除きます。
 その後、入れ墨の位置、怪我の位置などを調べられます。数百人はいるであろうおっさんの素っ裸を見るのは、もう この世の出来事とは思えません。自分はすでに普通の人間ではないんだと思ったのでした。


※ケツの検査は肛門の奥まで調べられるのか?


 上記のような噂(主にYouTubeの刑務所に入るとこうなる系の動画)があるようですが大嘘です。過去には行われていたようですが、現在はこのような屈辱的な検査はありません。
「ケツを広げろ」と言われ、軽く開いてみせるだけ。穴の中なんか当然見ません。無論、ガラス棒や指を突っ込まれることも絶対にありません。刑務官に触られることも基本的にはないのでご安心を。その後、結核がないか胸部X線検査を受けて終了です。


 繰り返しになりますが、一般に刑務官が被収容者の体を正当な理由なく触ることはありません。安心してください。
※ただし検身時は除きます。例えば作業中に面会に行くことになった。その際は工場から出るわけですから、なにか持っていないかを調べる必要があるため、全身を軽く触ります。
「検診」は刑務所の中では至るところであります。普通に受ければよいです。服やズボンの
上からポンポンポンと軽く触られるだけです。



刑務所用語
アカ落ち:刑の執行がはじまること。つまり受刑者になること。
領置調べ:一言で言えば持ち物の確認のこと。
玉入れ:陰茎部分に真珠などを入れること。女性が悦ぶらしい。
官物:刑務所から貸与・給与されるもの全般を言う。反義語は私物。




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