4年間、黒羽刑務所にいた人のブログ

        私が刑務所で服役した4年間を振り返ります

53. 仮釈放はどのくらいもらえるのか②


 2刑持ちの人の仮釈放 
               とても長い文書の割に結果がはっきりしないという展開になっております。お詫びいたします。
 特に初犯刑務所に多いケースだと思いますが、執行猶予中に再び犯罪を犯してしまったという人が大勢います。このような人たちを「2刑持ち」といいます。体感的には4割位いるのではないでしょうか。特に薬物犯や窃盗犯の人が多い印象がありました。


 と申します私も実は2刑持ちなので全く偉そうなことは言えません。私は覚醒剤や窃盗ではないのですが懲役2年6月✕2なので懲役5年というわけです。


もし執行猶予中に再度犯罪を犯してしまったら
 はっきり言って同情の余地はないのですが(そして私が言う資格はないでしょうが)、一般的には執行猶予中に罪を犯せば猶予されていた刑も含めて、2回分、刑務所に入らなくてはなりません。例えば一般道で30km/h以上の速度超過で検挙されると罰金刑となります
もちろん、裁判が行われ、前科がつくことになります。これだけで、執行猶予は取り消しとなる場合があります。酒を飲んでの運転などもってのほかです。再び刑務所に収監されてしまいます。


ダブル執行猶予
 幻とも言われていますが、執行猶予期間中に犯罪を犯し裁判にかけられた結果、もう一度執行猶予が付く場合がありますただし、基本的にはないものと思ってください。例外的に2回目が極めて微罪で前回とは罪状が異なる場合や、同じく微罪で前回の猶予期間が残りわずかな時は、まれにダブル執行猶予になる場合があるようです。また、被告人が生命に関わるような病気を患っている場合などもその対象になりうると聞いたことがあります。


1つ目の懲役刑が消える? 弁当切りとは? 
 実は、執行猶予中の犯罪で実刑が濃厚であっても、1つ目の事件については刑務所に入らなくてよいという場合があります。執行猶予の取り消しが行われるのは、2度目の事件の判決が確定したときに執行猶予中であることが条件となります。つまり、控訴や上告をすれば判決は確定しないので、被告人(未決)のままでいることができるのです。もちろんこれは、執行猶予の期間が残り半年に満たないような被告人に限った話となります。また、弁護人にもあまり良い顔をされないかもしれません。想定以上に早く審理が進めば、失敗です。
 このような行為を矯正施設では「弁当切り」と呼んでいます。もちろん、ここで言う弁当とは執行猶予のことです。



2刑持ちの人の仮釈放はどのように計算されているのか? 
 私がいた黒羽刑務所にも2刑、場合によってはそれ以上の刑を持っている人が大勢いました。そして、噂では、2刑持ちの人はそうでない人に比べて仮釈放がもらえないとか、1つの刑に対してしか仮釈放の計算対象にならないなどと言われていました。


 結局何が正しいのかわからないまま仮出所してしまいましたが、本当はどのように運用されているのかを少ない脳みそで考えてみたいと思います。
 刑訴法によれば以下のように書かれています。
---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
刑事訴訟法 第474条
2以上の主刑の執行は、罰金及び科料を除いては、その重いものを先にする。但し、検察官は、重い刑の執行を停止して、他の刑の執行をさせることができる。

---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------とあります。2刑の場合は重い方を先に執行するようです。また、刑の執行順序を入れ替える場合があることは、各居室に備え付けられている所内生活の心得えにも明記されていたので知識としては頭にありました。
 私はあとに犯した犯罪の方から執行すると思っていたのですが間違いだったようです。なぜなら執行猶予の取り消しは判決確定後、しばらく(私の場合は2週間ほど)してからやってきて、今まで覚えていた刑期の後ろに加算される形で告知を受けるからです。
 次に
---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
刑法第28条
懲役又は禁錮に処せられた者に改悛の状があるときは、有期刑についてはその刑期の三分の一を、無期刑については十年を経過した後、行政官庁の処分によって仮に釈放することができる。

---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
 これについては勿論知っていましたが、2刑の場合はどう考えればいいのかが書いてありません。私の場合は2年6月が2つ分であり、どちらも同じような罪状であるので執行順序の入れ替えはされたのか否か分かりません。そもそも、入れ替えた際に告知があるのか否かが不明です。なぜなら刑の執行順序を入れ替えの告知をされたとか耳にしたこともないからです。告知されないと考えたほうが良いかもしれません。


 刑務所は受刑者の改善更生、社会への円滑な復帰などを目的とするさまざまな処遇を行う施設と定められていますから、基本的には仮釈放に対して前向きなはずです。勿論殺人事件などの凶悪事件はそうではないと思いますが。そう考えると、2刑持ちの受刑者に対しては刑期の3分の1が過ぎた段階で刑の執行順序を入れ替えるのではないかと思います。それが仮釈放の要件を満たすには最も近道であり、私が知る限りでの、2刑持ちの受刑者の仮釈放状況とも矛盾しないためです。 
 例えば懲役3年と懲役6年の2刑持ちの受刑者がいたとします。重い法から執行するので
まずは6年間懲役を務めなければなりません。そして2刑目の執行から1年後にようやく仮釈放の対象者となります。つまり7年かかることになります。
 上の例を刑期の3分の1で執行順序を入れ替えると3年で執行順序入れ替え、そして1年で、つまり4年間で仮釈放の対象になることがわかります。勿論、仮釈放の条件を満たすだけであることは強調しておきたいと思います。


 犯情にもかなり左右されますが、2刑持ちでも仮釈放はしっかりともらえるはずです。明日からも脇見、雑談、無断離席をすることなく作業に取り組みましょう!(中にいる人へ)





もくじ①:https://20692793118279.muragon.com/entry/35.html
もくじ②:https://20692793118279.muragon.com/entry/36.html
もくじ③:https://20692793118279.muragon.com/entry/60.html



獄中日記ランキング


54. 刑務所の食事事情①

 刑務所の食事とはどんなものか、気になる方もいらっしゃると思います。そこで黒羽刑務所のある月のメニューを書き出してみました。


    麦飯は白米:麦の割合が7:3となります。


黒羽刑務所では・・・
・毎週火曜日の昼食は麺類が出ることになっています。
・毎週木曜日の夕食にはカレー類が出ることになっています。
・休日は基本的に朝食の味噌汁を除いて汁物が出ません。
・毎週木曜日・土曜日の昼食にはパンが出ることになっています。
・毎週火曜日・土曜日の朝食には納豆が出ることになっています。


なお、カレーは人気メニューということもあり、いつからか週2回になったと記憶しています。また、週二回のパンのうち一回は矯正指導日の朝の支給に変更になりました。


  メニューを見て感じることは、栄養バランスが良さそうで、健康的な印象を持たれる方が多いと思います。私が見てもそう見えますしね。
 しかし、ここは刑務所の中。娑婆と同じ感覚でいてはいけません。


 刑務所では煮豆の数が普段より1つ多い少ないといった、本当にどうでもいいことで喧嘩になります。刑務所の煮豆って甘いんですよね。受刑者は甘いものに飢えています。


 食事として配当される甘いものの代表
 ・ヨーグルト
 ・いちご牛乳・レモン牛乳(栃木旅行の際はぜひ飲んでみてください。おいしいです)。
 ・ぜんざい
 ・煮豆
 ・うぐいす豆
 ・きな粉マカロニ
 ・ジュース類
といった具合になります。ですので甘いものが全くないというわけではないんです。


 では、なぜ受刑者は甘いものに飢えるのかというと日々の強いストレスが原因ではないかと思います。甘いものを食べるとストレスが緩和されるという話を昔聞いたことがあったので、真偽はともかくとして、ある程度根拠のある説になるのではないでしょうか。


 私も刑務所にいるときは、甘い物や菓子類といったものが食べたくて食べたくて仕方ありませんでした。しかし、出所するとこのような欲求は数日で消えてしまいました。


 自由がなく常に疑われ、監視される世界です。些細なことで大声で叱責されるストレスが、どれほどのものかは説明するまでもないでしょう。


補足)
 20日の夕食が弁当となっていますが、いつの頃からか月に一回弁当が出ることになりました。しかも娑婆の弁当です。つくっていたのは山◯製パンでしたね。


 最初このニュースを聞いたときはみんな小躍りしたものでしたが、明らかに刑務所の受刑者用に作った弁当でした。刑務所の保存方法に問題があったのかもしれませんでしたが、2本の箸でさすと弁当全体が持ち上がってくるくらいの米の硬さでした・・・。味がどうだったかは触れるまでもないでしょう。 



もくじ①:https://20692793118279.muragon.com/entry/35.html
もくじ②:https://20692793118279.muragon.com/entry/36.html
もくじ③:https://20692793118279.muragon.com/entry/60.html


55. 刑務所の食事事情②


先ずはじめに 
 これから書く内容は、受刑者の食事を作る炊場の方々に対する苦情や文句ではありません。炊場の皆さんは、早出なら午前4時30分頃には出房して朝食の準備に取り掛かっています。就業時間も長く、本当にお疲れさまですと伝えたいと思います。


 ですが、少なくとも黒羽刑務所の食事があまり美味しくないのも事実です。私が経験した限りでは千葉刑務所の食事が一番美味しかったと記憶しています。東京拘置所やさいたま拘置支所の食事は千葉と比べればイマイチだなぁという感想です。


勿論、税金で食べさせて頂いているので文句を言う資格がないことは自覚しております。


黒羽刑務所の食事がイマイチな理由


・味が薄い。
 全国の刑務所に言えることですが、法務省は刑務所の食事に使用する塩分を減らすことを決定したようです。これが実施され始めたのが2011~2012年頃で、1日の一人あたりの塩分使用量は8g程度にしているそうです。以前は舎房内にしょう油とソースが設置されていたのですが、それも現在ではなくなってしまいました。日本人の成人の1日の塩分摂取量の平均値は、男性で約11gだそうですがそれでも多いということで8gになったそうです。全国平均のおおよそ3割減で献立を立てているので、味が薄い=美味しくない という等式が成り立っているのではないかと思います。ただし、医学的知見からすれば8gで十分なのだそうです。


・食事が冷えている。空調設備など夢のまた夢
 刑務所において食事をする場所を簡単にまとめますと、一般的には
 ・朝:居室
 ・昼:工場内の食堂(処遇上、調査中、懲罰中、入病中などの昼夜間独居の人は居室)
 ・夕:居室
となります。作業のない日は工場に行きませんので、昼食も居室になります


 特に美味しくないのが、工場で食べる昼食居室で食べる夕食です。私がいた工場は常時、90~100人程度でした。どのように食事を準備するのか箇条書きにしてみたいと思います。以下は昼食の準備の流れです。


①配食を担当する者は工場担当が指名した5名。(ちなみに配食をやりたくないと言った意見は一切通りません。そのまま調査・懲罰となります
午前11:10ごろ「配食!!!」の号令が職員からかかる。
配食係は離席許可を得た上で食堂へ向かい、配食衣に着替えて炊場から食事が到着するのを整列し、休めの姿勢で待つ。その間、当然交談(私語)は禁止。また、工場の人数分の皿などを配食しやすいように机などの上に並べる。もちろん無言で。交談の必要が生じた際は、必ず職員に許可を得てから行う
午前11:20ごろ食事を載せた台車が炊場から到着する。
配食時には必ず刑務官がつく。無論、不正な配食を防ぐためである。
この刑務官に並べた皿の数と工場人員の数が一致するか確認してもらう。
物相(麦飯の入れ物のこと)やヨーグルトなどの数が決まっているものは、数に間違いがないかすべて刑務官に 確認してもらわなければならない。
すべての確認が済んでから、ようやく盛り付けに入る。
約100人分の盛り付け完了までおおよそ20~25分かかる。
⑩刑務官に申し出て、すべての皿に入っているおかずの量が平等かチェックが行われる。
チェックが終わったら、各テーブルに食事を配る。これでようやく準備完了。


それで、言いたいのは、こんなことしてたら、せっかく温かい食事が冷めちまうよ!


ということです。ちなみに夕食もほぼ同じ形式で行われます。


 おそらく炊場で調理を終えてから受刑者の口に入るまでに1時間半位かかっているのではないでしょうか。刑務所で食べる食事には湯気が立つことなどめったにありません。真冬になれば食べるだけで体が冷えます。


 施設によって違いはあると思いますが、温かいおいしい食事が取れるとは思わないほうが良いと思います。


   一言加えるとすれば、味噌汁や各種汁物はものすごく味が薄いです。1ページ前に「すまし汁」というメニューがあると思うのですが、これただのお湯じゃないのかと疑うレベルです。


 私は、出所後最初に食べたのが松屋の牛丼だったのですが、味噌汁が濃すぎて飲めず残してしまいました。松屋さん申し訳ありませんでした。ただし、少し経てば味覚も正常に戻りますので、心配には及びませんが・・・。




もくじ①:https://20692793118279.muragon.com/entry/35.html
もくじ②:https://20692793118279.muragon.com/entry/36.html
もくじ③:https://20692793118279.muragon.com/entry/60.html