10. 無期懲役囚
先日、新幹線内で殺傷事件を起こした人物が「無期懲役刑」を言い渡されました。
被告人は控訴する意思がないようですから「無期懲役刑」が確定する可能性が高いと思います。
なぜ被告人(以下、彼と呼ぶ)が刑務所に入りたいと思うようになってしまったのかは私には理解できません。家庭環境、育児放棄、精神障害、いじめなど様々な要因があると思います。少なくとも非常に歪んだ考えを持っていると言わざるを得ないでしょう。被害者となった男性には心よりお悔やみ申し上げます。また、怪我をされた方の一日でも早い回復を祈っております。
私は、元受刑者という立場から、彼がこの先どのような人生を歩むのかを考えてみました。
まず、彼は留置場で警察官を殴っています。事件について反省していないことを体現してみせたそうですが、これは裁判には影響しないでしょう。殴られた警察官の方が可愛そうなだけです。事件送致となっていないようなので軽傷で済んだのかもしれません。
彼は起訴後、拘置支所へ移管となっています。ここでも問題を起こしたらしいのです。なんでも貸与されたシェーバーで自分の髪の毛を刈ったとかなんとか・・・。これで懲罰となったようです。
刑務所でもない未決囚の段階で懲罰を受けるのは、まったくないとは言いませんが、レアなケースだと言わざるを得ません。推定無罪の未決囚の面倒を見る、拘置所の職員は基本的には親切なのですが、彼は刑務所の職員もこんな感じだと思っているわけではないでしょうね・・・(*^^*)。
~この先、無期懲役の判決が確定したことを仮定としてお話させてください~
① 彼はどこの刑務所に収監されるか
彼は東京矯正管区で裁判を受けました。初犯でかつロングの懲役刑ですから「LA指標」の刑務所に入る可能性が高いです。よって「千葉刑務所」が第一候補ではないでしょうか。
東京矯正管区でLA指標の刑務所は「千葉刑務所」の印象が強いです。ただし数年前から
「長野刑務所」も刑期の長い受刑者を受け入れていますでのこちらの可能性もあります。
累犯受刑者や暴力団関係者は基本的にはいません。千葉刑務所は受刑者の約7~8割が無期懲役受刑者と言われています。
ただし、ロングの刑務所は過剰収容状態であり、他の施設も検討されるかもしれません。山形刑務所、岡山刑務所、大分刑務所あたりです。
ひょっとしたら「LB指標」に行く可能性も否定できません。そのうち、出所した受刑者からリークされると思います。
② 彼は真面目に刑務作業に従事するのか
この点については判断するのが非常に難しいです。彼が刑務所に求めているものが全く分かりません。社会に居場所を見つけることができず、刑務所に入りたいと考えるようになったようですが、刑務所に入所した経験がないのにも関わらず刑務所=天国と考えてしまうのは様々な意味で浅すぎます。
ある週刊誌の記事によれば「模範囚になり1種1類1等工になりたい」と言ったかと思えば「反則行為をやり続けて保護室に行きたい」と矛盾することを語っているようです。
後に詳しく説明したいと思いますが、刑務所では受刑者に対して制限区分と優遇区分という階級制度を設けています。
制限区分:4種、3種、2種、1種
優遇区分:5類、4類、3類、2類、1類
どちらも、数字が小さいほど制限が緩和されたり、より優遇措置を受けることができます。
また、「作業等工」と呼ばれる制度もあります。10等工から1等工まであり、数字が小さいほど作業報奨金が多くもらえることになっています。
一方、「保護室」とは刑務官に殴りかかったり、受刑者同士で殴り合いの喧嘩などをして興奮が収まらない場合に入れられる部屋のことです。ちなみにこの部屋に入れられることは「懲罰」ではありません。また、保護室=懲罰房でもありません。基本的には長期間入れられることはありません。だだし、その一方で、保護室に収容して良い期間の最大日数は決められていません。
つまり、彼は、相反することを言っており、私には何がしたいのかさっぱりわかりません。
ひとつツッコミを入れるとすれば、長期刑の彼はおそらく1種にはなれません。職業訓練などに受かれば別でしょうが。
③ 規律違反を行えば懲罰
刑務所では遵守事項というルールが定められており、これに違反すると懲罰が待ち受けています。取り調べの後、懲罰審査会を経て懲罰が言い渡されます。石鹸、タオル、歯ブラシ、ちり紙など生活に必要な最低限のもの以外はすべて部屋の外に出されます。そして、朝から夕方まで正座または安座(あぐらのこと)でひたすら座ることを強要されます。イメージとしては座禅のようなものです(食事時を除く)。用便(トイレ)にも許可が必要です。報知器で願い出ます。
そして、これが冬ならば地獄を見ます。寒冷地以外では暖房など入りません。あっという間に手足の指と耳がしもやけになります。普通の人間であれば懲りて悪いことをしなくなります。
黒羽刑務所はとにかく寒いさむいサムイ
「黒羽刑務所における真冬の独居房の室温の目安は朝:4~7度、日中:9~11度、夜間:7~9度」といった感じです。私はとある事情で時計を持っていたので、それについている温度計をもとにこの室温を知ることができましたが・・・。黒羽刑務所は設備が古く、殆どの居室はサッシ窓ではないので隙間風が遠慮なく入ってきます。
朝方、舎房の扉が凍ってしまい、扉の開閉ができなくなったこともあったようです。
それくらいの寒さです。皆さん。行きたくないでしょう(笑)。
④ 懲罰を受けようとしないとどうなるか
懲罰拒否と見なされれば、それに対して新たな懲罰が課せられます。それが延々と繰り返され、いつまでたっても隔離されたままです。それでも懲罰を受け入れないようであれば「処遇上」として扱われることになります。
一般受刑者に危害等が及ぶ恐れがあるので「工場」に出役させないという判断です。
こうなると独居房で極めて単純な作業を延々と行うことになります。部屋から出るのは入浴と運動の時だけです。もちろん他人との交談(会話)は一切禁止。工場に出て作業をしていないので、懲役の最大の楽しみであるテレビも見られません。食事は出ますが、一般受刑者と比べて麦飯の量がかなり少なくなります。ただでさえ少ない食事が更に減ってしまうわけです。紙や発泡スチロールでできた食器を使わされることもあります。そして、仮釈放になることもありません。
このような気が狂うような理不尽な生活ですが、これが彼の夢のようなので何も言えませんね。
私見ですが無期懲役は死ぬより辛い刑罰だと私は考えています。
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