手錠に腰縄という屈辱

　東京拘置所から黒羽刑務所まではマイクロバスで3時間近くかかったでしょうか。バスを降り、新入調室という場所に入ります。（ちなみに東京拘置所では新入調べ講堂という名前でした。広さが小・中学校の体育館の2倍くらいあるため「講堂」と名付けたのでしょう）。手には手錠とくそ重たい荷物、腰には縄が巻かれ数珠つなぎの状態です。体験してみれば分かりますが、本当にこれ以上ない屈辱です。
　とっ、先頭の人がものすごい声で怒鳴られました。なにかと思ったら、歩き方が偉そうだったからとのこと。おおこわぁ・・・。

新入調室という地獄

　★刑務所では新しく来た受刑者のことを新入（しんにゅう）と呼びます。間違っても「しんいり]とか「新人（しんじん）」とは呼びません。（もし呼ぶところがあったらすみません・・・）。

　ここでもまた全裸にさせられお尻の穴を見せることになります。何回やるんだよ。しかし、そろそろ肛門を見せることに抵抗がなくなってきますｗｗｗ。そして素っ裸のままで色々と説明を受けるのですが・・・。裸のせいか、全く頭に入ってこないんです。そうしていると下着、靴下、パジャマ、枕、枕カバー、襟布（えりふ）、シーツ、舎房着、工場着、メリヤス、運動靴、スリッパ、フリースなどが貸与されました。これらは刑務所つまり官からの貸与品です。フリースがあるのには驚きました。もちろん良い意味で。

　あとキャリーバッグ。これを私物保管庫として使えと貸与されます。
しかし、あんな狭いスペースでおっさんらが全員全裸ってどうなんでしょう？
あとは写真を撮って終了なのですが、いい歳したおっさんが全裸でウロウロしているこの状態。少なくとも健全ではないでしょう。もう少しプライバシーに配慮するとか、そういった考えはないのでしょう。まあ刑務所ですからしかたないのかなぁ。

　部屋に帰ってから気づきましたが、貸与された衣類はほとんどが使いまわしです。新品など絶対に回ってきません。運にもよると思いますが、特に下着類はボロボロ一歩手前という感じでした。

   また刑務所では「称呼番号（しょうこばんごう）」と言う番号を受刑者一人ひとりに付与して管理しています。この称呼番号も、この新入調べ室で告知されます。
　よく刑務所ではこの称呼番号で呼ばれると思われているようですが、そのようなことはほとんどありません。事務的な処理をする場合を除き、基本的には苗字で呼ばれます。同じ苗字が2名以上いる場合、例えば佐藤さんが同じ工場（刑務作業をする場所）にいる場合は「〇〇番佐藤」と呼ばれます。称呼番号をつけるのは事務的な管理がしやすくなるからです。これは一般社会でも同じことです。
　会社員には社員番号、学生なら学籍番号が与えられるのと同じであり、刑務所特有のものではありません。

教育訓練工場（新入訓練工場）

　黒羽刑務所では教育訓練工場を略して「教訓」と呼んでいました。ただし、他所から来た人の話を聞くと「（新入）訓練工場」とか「考査工場」と呼ぶ場合が多いようです。
　工場という名前がついているものの、作業は誰にでもできるとても単純なもので、どちらかと言えば、刑務所のイロハを教えるための工場です。普通の人は最低２週間ここで学んだあとに各工場に配役（はいえき）となります。普通と付けたのは、ごく少数ではありますがこの最初の訓練についていけない人がいるという意味です。

ここでひと言
・刑務所では社会では使わないような独特の読みをする漢字が沢山あります。例として
　配役　　正：はいえき　　誤：はいやく
　出役　　正：しゅつえき　誤：しゅつやく
よくYoutubeで刑務所の話題を扱った動画が上がることがありますが、これは基本中の基本。ムショではあたり前のことであるので、入所経験があると言いながら間違えている人のチャンネルはあまり信用しないほうがいいかもしれません。

　刑務所内での移動は行進が中心となります。行進は刑務官の「左左左右、左左左右」という号令に合わせて行進して行きます。また、イチ・ニ（職員）イチ・ニ（懲役）を繰り返すと言った掛け声もありました。これができないと以下の様になります。

「おい〇〇おめぇ、足があってねーんだよ。いつまでたっても終われねーだろうが！！！」
「すみません」
「おれに謝ってどうすんだぁ！！　相手が違うだろうが！！　おめ～のせいで全員が終われないんだぞ！！！！！！！！」
「皆さん。申し訳ございません！！！」
「〇〇列外に出ろ」
「いま、謝ったつもりかもしれねえが、全然聞こえねーんだよ。 おめーあとで全員に    謝れや　わかったか！！！」

　その後、彼は休憩時間などを潰して土下座行脚をしていました・・・。
　教訓工場だからみんな許してくれるのですが、一般工場でこんなことになったら大変なことになります。

ほんのちょっとの油断で懲罰へ

　初めての経験ばかりで舎房に戻って、夕食を食べると眠くなってきました。
仮就寝の時間になったので布団を敷こうとしたとき「おいっ！、てめぇーなにやってんだー！！」と隣の部屋から怒鳴り声が聞こえました。
　そしてひとりが連行されていきました。翌日聞いた話によると、立った状態で背伸びや腕回しをしていたらしいのです。
　刑務所では運動時間以外に運動とみなされるような動きをしていると調査・懲罰となります。運動好きで、これから刑務所に来る予定のある方は気をつけましょう。　

刑務所用語
　メリヤス：モモヒキのような衣類。防寒用。官物のメリヤスは薄いのでオススメしない。
　配役（はいえき）：受刑する工場を指定され、その工場に行くこと。
   新入（しんにゅう）：新人のこと。
   襟布：掛け布団の首周辺につける布のこと。唾液等で布団が汚れるのを防ぐ目的がある。

獄中日記ランキング

もくじ①：https://20692793118279.muragon.com/entry/35.html
もくじ②：https://20692793118279.muragon.com/entry/36.html
もくじ③：https://20692793118279.muragon.com/entry/60.html