4年間、黒羽刑務所にいた人のブログ

        私が刑務所で服役した4年間を振り返ります

14. 作業報奨金について①

 
作業報奨金とは
 懲役刑を言い渡された者は、当然のことながら刑務作業をすることが義務付けられています。そして、僅かな金額ではありますが「作業報奨金」という形でお金が支給されます。支給といっても現金を渡されるわけではありません。月に1回、前月分の作業報奨金額の告知があります。なお、刑務所における「作業報奨金」の締日は月末です。
 作業報奨金は出所後の生活資金に充てることとされていますが、日用品や書籍の購入に使用することができます。ただし施設によっては作業報奨金の使用に制限がかけられている場合があります残額は釈放時に現金で支給されます


作業報奨金の計算方法
    作業報奨金の金額は「作業時間」と「等工」と呼ばれる階級制度によって決定されます。どの受刑者も初めは10等工から始まります。10等工の時給は7円30銭です。1ヶ月すると9等工となり、時給は9円40銭にアップします。
 書いていてもきりがないので表にまとめてみます。


表1


表2:表1より1ヶ月の作業報奨金の目安を計算したもの


 (表2)の月の作業時間は120時間としました。実際の1ヶ月の作業時間は110~120時間程度が多いためです


 つまり最初にもらえる報奨金は最大でも880円くらいです。ただし、いつアカ落ちしたか(被告人から受刑者になったか)や、いつ刑務所に移送になったかは人それぞれであるため、刑務所での最初の作業報奨金の金額は個人差が大きいはずです。800円以上という人もいれば数十円という人もいるはずです。
  
(表1)を見るとA作業、B作業、C作業とあることが分かります。その説明をしますと


A作業:
①職業訓練または外部通勤作業
②炊場または営繕工場における作業
③作業用機械若しくは器具を用いて物品を製作する作業、 比較的高度な 知識・技能等が必要な作業
④班長または指導補助として作業を行なっている者
⑤看護係、理髪係、居室経理係 及び 衛生係


B作業:
①A作業及びC作業以外の作業


C作業:
①居室内における作業    
②養護工場における作業


に分類されます。


 それでは次に、等工が上がるにはどれくらいの期間がかかるのかを見ていきましょう
(表1)を見ればわかるように例えばA作業の者が1等工になるまで、(1+1+2+3+4+5+6+7+8=)37カ月かかります。しかもこれは最短の場合で、途中で懲罰を受けると等工が下がり、1等工への期間は更に延びます。
  また、B作業やC作業に従事している受刑者は、等工の上限が設定されているため、作業が変わらない限り、5等工や3等工で作業報奨金が頭打ちになります。精神安定剤などを服用しているとA作業にはまずなれません。


 (補足)
 具体的にどの作業がA作業、B作業、C作業になるのか上の説明を見ただけではわかりにくいと思いますので補足させていただきます。黒羽刑務所ではかぶっている帽子の色で判断することができます。なお、経理工場の受刑者はすべてA作業らしいです。よってここでは一般工場でのお話となります。


A作業:帽子の色が赤色または黄色の受刑者
 具体的には、計算係衛生係資材係班長・運搬係機械工


B作業:帽子の色が緑色の受刑者
 主に座業(座り仕事の人)。一部検査係で立ち仕事の人もいます。
※C作業は前述の通りです。


 つまり、必ずしも「立ち作業」=「A作業」というわけではありません。黒羽で受刑した方でも勘違いしていた方が多いのではないでしょうか? 座り作業でも機械工であればA作業となります。
 食事に関しては、立ち作業はA食、座り作業はB食となっています。



作業報奨金ってもう少し貰えるんじゃないの?・・・
 実際には、作業をしっかりやっている受刑者に対しては、工場担当の職員から「ヅケ」がつきます。これにより、加算計算され、実際にもらう金額はもっと多いという場合が多々あります。
 実際には1等工になれば10,000円前後となることが多いようです。


 また、舎房にて配食を行う配食係に任命されることがあります。8時間の作業時間外で配食は行われますので追加で作業報奨金を頂くことになります。
 ただし、舎房配食は金額以上のデメリットもあるので、やりたがらない人が多いです。
これについてはいずれ書こうと思っています。


 炊場で作業する受刑者など、一日の作業時間が8時間を超えた場合も、報奨金が増額されます。そこは娑婆の残業代と同じような仕組みとなっているようです。


 気をつけなくてはいけないのは、懲罰を食らうと等工が下がることがあるということです。そんな事にならないように真面目に作業に取り組みましょう。



※記事の作成に当たり、下記の資料を参考にしています。


 作業報奨金に関する訓令 - 法務省
 http://www.moj.go.jp/content/001174893.pdf



もくじ①:https://20692793118279.muragon.com/entry/35.html
もくじ②:https://20692793118279.muragon.com/entry/36.html
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